VOL.029
ベテランの味わい
10月も半ばになると、すっかり秋も深まり、冬の到来を早くも感じさせる日もちらほら感じとれる気候になったが、これに反比例してゲームは熱さを増してきているように感じられる。勢いのある若手チームの爆発的な攻撃力は、各地の大会に於いて素晴らしいパフォーマンスを見せ、驚異的なスコアを恒常的に叩き出している。
しかし、これを受けて各クラスに於いてベテランと呼ばれるチームの戦いぶりも渋い光を放っていることに触れてみたい。
まずはドギーズクラス現チャンピオンの鈴木哲&PATTYチーム。とても印象強かったのは先日行われた木曽三川の最終日、決勝での戦いぶりである。この日は天候も回復し、日差しを浴びてそこそこの気温となり、ワンコたちには少々厳しい状況であった。PATTYはスピードに優れている子ではないが(失礼!)その卓越したキャッチ力で数々の大舞台を制してきた。この日も明らかにスピードが落ちていたのだが、その状況を正確に把握して2投のミドルの後に投じた、それはそれは優しいチョロ(時間調整の為のショートスローの愛称)の2ポイントに哲さんの愛犬への優しさと勝負に対する強い意志を感じ取れた。そして時間ギリギリに間に合った4投目を再びミドルへ投げ込みPATTYが応え見事に優勝。愛犬の長短所を理解し、信じているからこその戦いぶりに唸らせられた1戦だった。
また、同大会2日目のスーパークラス。大井&ハンチームも見事だった。この日はコートに対して縦気味の風がやや強めに吹いて昨年度のランキングトップ3を含む多くのプレーヤーを苦しめていた。これに大井さんは1ラウンドから決勝までミドルエリアを中心としてキャッチしやすい高さのディスクを1投1投正確に投げこんでいた。そのスローにハンが見事に応え、他に付け入る隙を見せることなく見事に優勝を勝ち取った。如何に安定したスローを積み重ねるかが大事なのかのお手本のようなゲームだった。
これ等の更に1週遡った湯沢大会の木田&カルーアミルクチームも取り上げたい。このチームもかつてジャパンカップスーパークラスを唯一2連覇した強豪チームであるが、カルーアも間もなく12歳を迎えようかという齢である。そのパートナーに(合わせたとは思えないが…)やや高さを出したロングスローを投げ込み、スピードの落ちてきたパートナーが追いつく時間を与え、正確なキャッチを繰り返させる。その戦いぶりは本当に見事、気持ちが切れないカルーアの強さと巧さも改めて痛感する優勝劇だった。11歳を超えてスーパークラスを制した犬たちは多くは存在しない。あやふやな私の記憶だが、小泉おいちゃん&MAYU、大塚BINGO!、望月FLYくらいではないだろうか。それぞれ愛犬のことを理解し、信じて確立した戦い方を貫いたチームだ。その現役チームの活躍には感服するばかりだが、このチームにはまだまだ活躍してもらいたい。
そしてもう1チーム、やぶはら高原2日目ドギーズクラスでの村松ピノチーム。この日は天候に恵まれ、風も微風の素晴らしいディスク日和。しかし、その高度からくる空気の薄さなのか、朝晩の気温差からくる体感的な暑さなのか、どのクラスも出場犬のパフォーマンスがいまひとつ優れなかった。ポイントが伸び悩む中、その小さなパートナーに思い切りのよいスローを繰り返す村松さんに応えて走り込むピノ、いまだにどこにそんな闘志があるのかと思える可愛らしい容姿だが、苦しみながらもポイントを積み重ね、予選1位で決勝に進出。決勝においてもそのスタイルは変えずにミドル、ロングと2本で優勝を決めた勝負強さが光る戦いぶりだった。ヒョロッと大きな村松さんと本当に小っちゃくて可愛いピノの凸凹コンビに乾杯である。
いずれのチームもパートナーとしての信頼感が強く、自分たちのスタイルを貫き通す姿勢が織りなすベテランの味、ガンガン攻めてくる勢いある若い勢力も魅力だが、愛犬と長くディスクを続ける醍醐味を知るベテランの味わい、深く噛みしめれば益々味わい深くなるのではないだろうか。